本日の一日一話。
天風人語のテーマは「論語(ろんご)と算盤(そろばん)と天風哲学(てんぷうてつがく)と電卓(でんたく)〜論語創作ものがたり パート196」だ。
諸君、昨日の引き続きであります。
さて、私の爺(じい)は夕飯の場合には必ず四つも五つもお膳(ぜん)を並べて、腰元が三人もかしずいて晩酌(ばんしゃく)の楽しみを毎晩やることになっています。
そうすると必ず私が呼び寄せられる。
で、言うことがもう紋切り型、判で押したようなことを言うんです。
「そちの好めるものを食(しょく)せ。 もっと近(ちこ)うまいれ。 よく眼(まなこ)をすえて爺の額(ひたい)を見ろ」
額に三日月型の刀傷があるんです。
それが自慢なんです。
私の爺というのは。
「これは戦場出途(しゅつと)の往来によって男の誇りの向こう傷じゃ。 よくうけたまわれ。 男が戦う際は腕じゃないぞ、度胸だぞ。 いかに腕前が優れてるといえども、度胸がなければ必ずその戦いに負ける。 爺が何べんものう、戦場を往来しても、この傷だけでもって命を全うしたのは、自慢するわけじゃないが、しいだま(=度胸)があったからじゃあ。 いざという時は度胸ぞ」
これが必ず爺が私にいう毎晩の言葉なんです。
もう毎晩ですから知っているんです。
「近うまいれ、好めるものを食せ。 眼をすえてよくこの傷を見い」
もうちゃんと何もかも知っているんだ。
こっちはとにかくお膳のものを食いさえすればいいんだ。
何のこともなく思っていた。
むしろ毎晩毎晩の話を飽きっぽく聞いていたやつが、こんど真剣で命のやり取りをする時です。
この物語の続きは明日また・・・。
今日一日、真我とともにあらんことを
天意天風
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